第8回 高橋 明さん

私がヴァイオリン製作を始めるきっかけになったのは、1983年の中学1年生のころでした。なぜか急にヴァイオリンの音や形に魅せられて、ヴァイオリンを弾いてみたいと思うようになりました。両親に工場製の安いヴァイオリンを買ってもらい、独学でギコギコ弾いておりましたが、どうして音が出るのだろうと中を見たくなって分解してしまいました。
中はほとんどがらんどうでがっかりしましたが、それでも良い音が出る楽器の構造に魅せられて、最後にはヴァイオリンを作ってみたいと思うようになりました。当時はまだ日本語で書かれた楽器製作の文献もほとんどなく、分解した楽器を参考に、見よう見まねの独学で作ったヴァイオリンは数年がかりで、高校1年生のころに完成しました。
その後も高校・大学と趣味でヴァイオリンを作っておりましたが、大学1年生のころに縁あって日本弦楽器製作者協会のアマチュア部門であった準会員部門(現、日本バイオリン製作研究会の前身)に入会することができました。日本を代表する楽器製作家と出会えたことはもちろん、当時の私と同様に楽器製作を趣味にする準会員の方々と知り合えたことも、私のその後を決める大きな出来事でした。

当時の私はまだ二十代になったばかりの若輩者で、最年少会員。周りのみなさんは定年してから楽器作りを始めた方も多い大先輩ばかりで、多くのご指導・ご鞭撻をいただきました。それと同時に同じ趣味の仲間として楽器製作をする上での悩みやアイデアを持ち寄って、みんなでワイワイガヤガヤ楽しい時間が過ごせました。その後、社会人としてサラリーマンを続けながらも、楽器製作を作り続け、イタリアに留学して楽器製作の修行の後、プロになりました。

最近よく楽器製作を目指す人たちから「楽器製作で一番重要なことは何ですか?」との質問を多く受けます。精度の高い仕事を頑張って続けることはもちろんですが、どうしてもプロとなると生活のために日常の仕事をこなしていくことが優先されてきてしまいます。私が楽器製作のプロとなって最近特に感じることは、楽器作りで一番重要なことは楽器製作に対する熱い情熱や探究心を持ち続けることだと感じます。ただ毎日同じ仕事を続けるだけでなく、仕事に対する情熱や探究心があってこそより一層よい楽器作りへと向上できるのだと信じております。
私はそれを当時準会員部門であった日本バイオリン製作研究会のみなさんから受け継いだと思っています。そして、その頃に感じたみなさんの情熱や熱意が私のそれからの道を決めました。十数年もアマチュアとしてヴァイオリンを作り続けられたこと、そしてプロになったこれからも熱意を持って仕事を続けられること、これもみなさんから受け継いだ熱い情熱と探究心があったからだと思っております。そして今でも研究会のメンバーとして遠く離れていてもみなさんと同じ道を同じ熱意を持って進んでいきたいと思っています。

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